「続・隙間」

思うこと・仕事編

前回に引き続き、隙間に付いて考えて見ましょう。
使い手、買う人にとっての隙間商品は、
「どこでも手に入る定番でも流行りの商品でもないけれど、
自分の必要や好みにぴったりくる品」ということでしょうか。
作り手、売る人にとっては大企業が出来ない、又はやらない規模のビジネスゆえに
競争の少ない(ともすれば売上も少ない)商品であると言えます。
隙間商品はこの二つの条件が重なる部分で成立するものだと思います。
これは久宝金属の商品開発においても常に意識している事でありますし、
レールシェルフもこの条件に当てはまる商品であると思いますが、
もうひとつ強く意識するテーマがあります。
それは「隙間の捉え方」に関わることです。
商品やサービスは、不足や不便に応えたり、心身を癒したり、満足を感じてもらうためにつくられ提供されています。
これは外から足りない部分を埋める、つまり「隙間を満たす」という考え方です。
久宝金属の商品に特徴的なテーマがあるとすれば、それは「隙間を残す」
または「隙間を創る」という事です。
この「隙間」は「余白」と言いかえても良いかも知れません。

レールシェルフを例にとってみましょう。
レールシェルフはそれだけでは空間を作ることは出来ません。
つける場所を決めて、壁に取り付けて、好きなものを置いて飾って、
初めて場として出来上がるものです。
作ってお届けするのは私たちの仕事ですが、
それ以外はすべて使い手にゆだねている商品です。
ゆだねている部分のほとんどは、容易にもっと便利な他の商品や
サービスに置き換えることが出来ます。
ラックなどの収納家具、新築オプションのシステム収納、
職人さんの施工などなど・・・・・。
しかし、壁を飾る商品やサービスの本来の目的はやはり飾ることであり、
それは使い手だけが果たせる領域です。
部屋を飾るときに、あらかじめ用意された収納や装飾は、
罫線の入った方眼紙や塗り絵のように、便利さと引き換えに余白を狭める、
つまり自由な発想を妨げてしまう側面も持っていると私は考えています。
便利で完成された商品やサービスは既にたくさんありますが、
使い手が自由に発想を広げることが出来るように
「余白を創る、残す」という視点は軽視されがちなのではないかと思います。

レールシェルフはただの壁をまっさらで大きいカンバスに変える、
クレヨンや色鉛筆の様な道具です。
使い手が自分の気持ちに向き合って、自由に飾りつけができるように
必要なもの以外を全て削ぎ落とした商品です。
JID Design Award 受賞で驚き、また嬉しかったのは、
「シンプルであるがゆえに、さまざまな場面になじみ、使い手の自由な
発想を生かせる “Japanese simplisity” のある 日本的な商品」
との評価を頂いたことです。
特に商品説明や展示ブースでそのような説明をしたわけではないのですが、
商品から私たちの想いが伝わったことに心を強くしたことを覚えています。
レールシェルフを手にしたとき、まっさらな画用紙に向ってどんな絵を描こうかなと
考えている時のような自由でわくわくする気持ちを感じていただければ幸いです。
また、これからもその気持ちを忘れずに開発、製造に取り組んで参りたいと思います。

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