n-bench
n-bench
W 1200 × D 360 × H 360
W 360 × D 360 × H 360
四万十ヒノキ集成材
アジャスター4箇所付
環境対応型無鉛塗装仕上げ
(UVカット、F☆☆☆☆、食品衛生法適合)
n-benchについて
まずデザインするものを決める前に、清流で名高い高知県にある四万十川と川側にある大正町集成材工場を訪問しました。四万十川流域には、日本有数の整備された檜の樹木があります。
大正町集成材工場は、樹木の生育段階で発生する間伐材の有効利用を長年研究されていますが、そこで誕生したのが木のブロックを集めて接着圧縮した集成材です。
檜には香りの良さと殺菌作用という利点がありますが、その特性に加えて集成材には、木材でありながら湿度や温度による収縮がほとんど発生しないという大きな利点を持っています。
集成材でなにを作るか思考する中で浮かんできたのが、四万十川に何本も架けられている「沈下橋(ちんかばし)」でした。沈下橋は、橋にあるべき欄干がありません。更に橋の側面と橋脚には大きな曲面が施されています。
そのカタチは、四万十川が増水・氾濫した時、水面下に「沈む(沈下)」ことを見越して作られています。つまり水に流されない為の工夫によってできたカタチなのです。
私は、その沈下橋がベンチを並べた姿に見えたのです。
ベンチは個人というよりは複数の人が共有して使うものであり、橋と同様に「共有」するものとしての「姿」が見えます。一人でも二人でも時には三人でも使える自在さがあります。
同時にやや低めのベンチは、時には本を読むために寝そべったり床に座って書き物をするための机として使えるかと思います。それは使う人それぞれの「工夫」に委ねられています。
n-benchは、材料の厚みを感じさせない為の面取りや全周に施された柔らかい曲面の高い木工技術と、檜の香りや手触り、人を受け止めてくれるようなソフトな座り心地といった、自然の持つおおらかさの両方の良さが体現されています。
おおらかさと精密さの絶妙なハーモニーが座るカタチになりました。
秋田道夫
縁を結ぶベンチ
昔、夏になると縁台が出され人はそこに集いました。
将棋をするお父さん、孫をおぶっているおばあちゃん、汗を流してさっぱりしていつになく色っぽいお母さん。周りで子ども達はきゃあきゃあ遊んでいます。もちろん近所の人達皆がそこに集っていたのです。
このベンチには、そんな人と人とのつながりの再生への願いが込められています。
座ると驚かれるでしょう。この檜はお尻をふわっと柔らかく受け止めます。
立ち上がろうと手を付くと、職人によって磨き上げられた表面はあくまでも柔らかく手にしっくり馴染む事が分かります。
座面が丁度、真四角のベンチもできました。ここに座って独りで黙考も良いでしょう。画像のように組み合わせて使う事も出来ます。
四万十ヒノキ・職人・縁台・人の集い・・・これらのキーワードをデザイナーが今の生活に合う形に作り上げました。
そしてその形は実は、四万十の人達の生活を支えてきた「沈下橋」の形でもありました。
床にぺたっと座り込んで、これを机代わりに使うとしたらそれは願っても無い事!
住まいをフレキシブルに使いこなしてきた日本の生活がこのベンチで改めて実現出来るとしたら、そんなに嬉しい事がありません。
シンプルな暮らしは「工夫」を呼びます。
「KUFU」はそんな日本人の知恵が今に生きる事を実現しているブランドです。
TED 川添光代