”ないもの”つくります

”ないもの”つくります

物語・秘話

久宝物語

始めに

久宝金属は、父である創業者内田欣吾が戦争から帰ってきて作り上げた町工場です。一番の特徴は、以来、一度も下請けをしたことがないことです。
「大阪の町工場」は有名ですけれど、下請けをしたことがない私たちはちょっとユニークかもしれません。

私たちは、自分たちで発案・企画・設計し、必要な場合は専用の機械や治具を使ってお客様方にお届けする最終の製品となるまでを作り上げてきています。
直接お客様に届くわけですから、たくさんのこだわりを持って製品を作っています。
お客様が私たちの製品を手にした時の笑顔を思い浮かべながら、頑張っていることの一部を知って頂こうと思います。

1.妥協のないものづくり

例えば「インテリア棚受
私たちは、私たち自身が購入者となったと考えて、納得できるまで諦めずにいいものづくりを追求し続けています。
この棚受は、今のデザインされたインテリアに合う様、シンプルな作りに設計しています。一本のアルミのバーから出来ていますけれど、筋互い部分を縦に曲げることで「強度」を出し、また同時に「取り付けやすさ」も提供しています。

インテリア棚受

デザイン性」と「強度」と「取り付けやすさ」をこのシンプルな形で実現しました。
そこを評価されてグッドデザイン賞を受賞した製品です。 表面処理やカーブの角度などにもこだわって、職人の手作業で、美しさと強度を両立させています。
また、製品だけじゃなくパッケージも自分たちでデザインすることで、お客様方に笑顔でいて頂きたいと思っているのです。

インテリア棚受使用例


まず、パッケージを開ける時と捨てる時のことを考え、プラスティック部分と紙の部分は別に作られていて分別しやすいです。パッケージを開くと、そこに取り付け説明が書かれています。 分かりやすく、余分なごみを出すこともありません。
もちろん今の内装壁に取り付け対応するプラグ付きですから、迷うことなくお買い求め頂けます。
他の製品も手になさったら、じっくり見てみて下さい。私たちの心意気を感じて頂けたら、そんなに嬉しいことはありません。

2.私たちの対応力

私たちは色々な「特注」もしています。
金属板のカットや穴あけ・曲げなどから、ある程度の形になったものも作ってきました。
個人のお客様の「ここにこんなものがあったら便利なのに」にもお応えしますし、店舗の什器、学生さんの卒業制作やアーティストのお手伝い、工場や会社の改装などのお手伝い、プロのデザイナーの方のお手伝いもしています。

特注品:黒のテーブル

特注例 黒のテーブル

サイズのみご指定頂き、形状等はお任せしますとのことで工夫を凝らして制作致しました。

素材:鉄板・鉄角パイプ
・ぶつかっても危なくないように角を斜めに。
・強度を増すため長方形の足を対角に取り付け。
・脚の裏にはアジャスターを取り付け、凸凹の床にも対応。

レールシェルフもサイズや色目の変更等にも対応しています。
お客様方のご要望にはできるだけお応えしたい・・・それが私たちの願いですから。

3.創造力と工夫力と「おもてなしの心」

Qholia(クホリア)

父の時代から70年以上、私たちは自分たちで発案したものを最終の製品の形にまで仕上げて来ました。
私たち自身が発案し、工夫の力でより美しく使いやすいものをお求めやすい価格で仕上げ、お客様に届けることが私たちの誇りです。
例えば3DプリンターのQholia(クホリア)

私たちは製品を開発し、試作する時の為に市販の3Dプリンターを買いましたけれど、あまりにも精度が悪くて使い物になりませんでした。
現社長はそれを嘆き、自分でどんどん改良に改良を加えてとてもいいものに変えていっていました。すると「そのプリンターが欲しい」という人たちが現れたのです。
普通はそうなったら、その改良版を作ろうとすると思いますよね。けれど、現社長はそれでは納得しませんでした。
自分とは違う精度を求めている人もいるだろうということで研究に研究を重ね、試作を何度もして今のものにたどり着きました。
例えば、できるだけシャープなラインを出したい人がいるでしょう。できるだけ滑らかな皮膚感を出したい人がいるでしょう。微細なものを追求し、それを出したい人がいるでしょう。
そのすべての人の「」を叶えるべく、会社に泊まり込んでまでして開発したのがこの「クホリア」なのです。

元からあった物の何が良くなくて問題が生じるかを研究し、一つずつ解決しながらこの「クホリア」を完成したのです。
たくさんの人の「」を叶えたい・・・現社長の名前は「多夢」。
まさにぴったりの名前ですね!!

文責: TED 川添光代

ものづくり秘話

始めに

問題は山積み!新製品を作るとき、いつも沢山の問題に突き当たります。
「どうしても作りたいと思ったのに、もう無理だ!」って思うくらい沢山出てくるのです。
でも、その時点でやっとスタートラインなのだという事が分かりました。物事ってシンプルに見えますが、色々な要素が絡まっていますよね。
ですから問題を一つ解決したと思ったら他の所に不備が出来る・・・というような「ガッカリ事件」はしょっちゅう起こります。「上手く解決させたと思ったのに・・・」と意気消沈することもままありました。

私たちは、自分たちで発案・企画・設計し、必要な場合は専用の機械や治具を使ってお客様方にお届けする最終の製品となるまでを作り上げてきています。
直接お客様に届くわけですから、たくさんのこだわりを持って製品を作っています。
お客様が私たちの製品を手にした時の笑顔を思い浮かべながら、頑張っていることの一部を知って頂こうと思います。

「無茶をカタチにするのが仕事です!」

レールシェルフを例にとりましょう。ネットで知った素敵なインテリアショップに行きました。そこでお客様がこんな事をおっしゃっているのを聞きました。
「色々考えて、収納もタップリにして家を建てたけれど、住んでみたらまたいくつか棚が欲しくなった。でも、どんなに良い物でも棚受があると家のテイストに合わない。なんとか板だけ壁から出ているようにならないかなあ・・・」
それでピンと来ました。だって、私もリフォームなどで家をきれいにしたらそう思うだろうな・・・って思いましたもの。
で、会社に帰って「壁から板だけ出ているような、そんな棚を後から付けられるように作ってちょうだい!!」と言ったのです。
「そんな無茶な」と専務。
その無茶をカタチにするのが仕事です!!」と私。

「レールシェルフができました」

レールシェルフ

それでできたのが「レールシェルフ」です。
後から壁につける」+「板だけ壁から出ている様に見える」という矛盾しているような要望を何とか可能にしたいと思って作り上げたのです。
そうです!お客様の「わがままなご要望」が新製品という「カタチ」になったのです。
こんなカンタンな構造の物ですが、先ほどのように会社で叫んでから開発には二年間も掛かってしまいました。

「問題は壁でした」

私達は昔からお部屋でお使い頂けるような装飾的な棚受を作ってきました。そして、それは結構丈夫で耐荷重も数十キロあるのです。
レールシェルフも初めはそのような頑丈な物を考えていました。でも、分かったことがあります。

昔と違い、今の住宅は大半が「石膏ボードの壁」だという事です。
日本家屋は紙や木で出来ていて火事になりやすい、そのために消防法で壁には燃えにくい素材を使わなくてはならなくなっているんですね。そしてそれを安価に達成しようと思うと、どうしても石膏ボードを使わざるを得ない・・・という事で、石膏ボードの住宅は多いのです。石膏ボードは石膏の粉を固めた物なので、消防法が目的としている問題は解決できているのですが、昔の木質壁のように丈夫ではありません。 棚をつけて物を乗せる実験をしたら、ある段階で何の音もなく突然、急に大きな穴があいて壁が落ちました。危ないですね。

壁に問題がありました。
という事は、耐荷重の大きな棚は壁とつり合わなくなって来ているという事です。危ないのでこれでは取り付けを専門家に頼まなくてはなりません。
たくさんの討論のあげく、耐荷重を捨てたのです。

「色々な事を捨てました」

アルミレールシェルフ

でも、ここで形も振り出しに戻ります、結構良い所まで進んでいたんですが、耐荷重を意識してデザインしていたので、もう一度考え直す事になりました。
仕切り直しです。
では、耐荷重の代わりに何をお客様に提供しましょうか?

あんな風にもこんな風にも使えたら・・・と様々なオプションがつけられる案も色々出ました。例えばおふきんが掛けられる様にとか、調理道具を収納しておける様にとか、フタ置き場とか・・・。
それも検討していきました。でも、どうしても美しく出来上がりません。
そして他社のよく考えられたシステムの物との違いを明確に出来ません。
「あれより安いです」ではつまらない。それで「色々オプションがつけられる案」も諦めました。
耐荷重の次に色々なオプションが付けられる・・・という事も捨てたのです。
そうです、ここでよりシンプルな棚という方向性が見えてきました。

工夫と粘りで実現

インテリアライフスタイルで栄えある賞を頂いた時に、その審査委員長がおっしゃって下さったこんな言葉があります。
「ここまでシンプルに削り取った棚だからこそ、どんなテイストのお部屋にも合うし、工夫一つでどんな風にも使える。これこそJapanese Simplicityです」と。

壁ってクロスが貼ってありますよね。 そのおかげでそのクロスの向こう側がどうなっているか意識する事がありません。
壁付けの棚を買いに行ったとしましょう。お店に行くと「石膏ボード用」とか「木質壁用」とか書いてあります。 でも、自分の家の壁が何で出来ているか日頃意識していないので困りますよね。結局家に戻ってコンコンと壁を叩く等して調べなくてはなりません。二度手間です。
なので私達は耐荷重を減らして形を思いっきりシンプルに、「どんな壁にもつけられる」という機能をくっつけて、よりお客様方に親しく思って頂ける工夫をしました。

クロスのおかげで見えない壁の向こうをそんなに心配せずに付けられるのです。 上記のような事を解決する為には、はめ合わせ部分を何度も何度も設計し直しました。 せっかく設計しても、もたもたしたデザインならやり直しです。そして、思い立ったらすぐに付けられるよう、どなたでも簡単に付けられる様に・・・という事を重視しました。
そうです。今までの機能を捨てたので、私達はお客様が「カンタンに」「ご自分で」「どこにでも付けられる」という事を優先しました。

考えたのはシステムや棚板の形だけではありません。
ネジ、ネジ穴の位置、端や裏の処理、色、パッケージとそこの表示・・・と一つずつこつこつと作り上げていきます。
どんな事でもそうかもしれませんが、ものづくりでは95%の出来上がりでは私はまだ道程の半分くらいしか来ていないな・・・と感じます。

残り5%部分にとても難しい問題が残っているからです。そうした物を解決して一つの製品を生み出すには何といっても「より良いものを提供したい!」「お客様に喜んで頂きたい」という情熱と、
やはりその想いを実現する「粘り」が要ると思います。

「粘りを支える勉強会」

その為に、私達は色々な事に取り組んでいます。つまり、その「粘り」を支えるものです。社内で沢山の勉強会や改善会議を行い、社員全員で取り組んでいます。

アルミのレールシェルフの端の丸みをご覧になって触ってみてください。
端の丸みはいつも均一になる様に、社内で簡単な機械を作っています。その作業をサポートする道具も作りました。そして、最終的には人の手で磨き上げます。 柔らかな手触りが買って下さったお客様の心にピタリと添います様に・・・そんな気持ちで磨いています。
また、端の面は場所によって磨き方を変えています。 手が触れる外側は手触りも考慮し少し柔らかく、シェルフを取り付けた時に重なって隠れる部分はこの製品のシャープさを残すために、キリリとしたラインを大切にして磨いています。
お客様には意識していただけないかもしれない。そんな所にまで凝って磨いているのは社員みんなの心意気です。
昔の日本人はお客様をお迎えする時、季節の花や掛け軸を飾りあちらこちらを掃き清め、器を選んで様々な形で歓待の心を表していました。 「ものづくり」というのはそんな「おもてなしの心」を、物を介してお客様方へお届けできる事なのだと感じています。

MITSUYO

ごあいさつ
会社概要
久宝物語
ものづくり秘話
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